用語集

「急性血液浄化法に関する名称・用語」試案

急性血液浄化法の名称に関する小委員会

土谷総合病院 川西 秀樹
昭和大学藤が丘病院救急医学科 兼坂 茂
秦野赤十字病院内科 北村 真
横浜市立大学付属市民総合医療センター救命救急センター 鈴木 惇一
千葉大学大学院医学研究院救急集中治療医学 松田 兼一

はじめに

急性血液浄化学会が設立され13年になるが、この間、多くの療法・技術の進歩により急性血液浄化法が多様化されてきた。そのため「名称・用語」の一部に混乱が生じてきており、急性血液浄化学会として、「名称・用語」に関して統一した見解を出す必要に迫られている。
「急性血液浄化法の名称に関する小委員会」は平成13年秋の評議員会で設置が承認され、平成14年春より活動を開始してきた。本稿では、その小委員会の試案を提示する。
「名称・用語」表示様式
表示様式としては
1)分類
2)和文:確実なものにとどめた。確定されていない用語に関しては、英文表記のみとした。
3)英文表記:acute dialysis quality initiative (ADQI、http//www.adqi.net/)の表記を参考とした。
4)略号:確定されたもののみにとどめた。
5)定義・注意点:必要なものに関し定義・注意点を付記した。
なお表記順は重要度の高いものからとした。

名称・用語

1.療法
 1)血液浄化・血液浄化法、blood purification (BP)
 2)血液浄化療法、blood purification therapy
 3)急性血液浄化、acute blood purification、blood purification in critical care
 4)腎機能代替療法、renal replacement therapy (RRT)
 注)腎補助を目的とする場合のみ使用する。non-renal indicationは含まない。
2.持続療法と間歇療法
 1)持続的血液浄化療法、continuous blood purification therapy (CBP)
 定義)一日当たり24時間持続的に行うことを開始時に設定した場合とする。不可抗力で24時間施行できなかった場合も持続的とする。表記する場合には必ず、施行方法、施行条件(血液浄化器、血液流量、透析液流量、置換液流量、濾液流量)を記す。
 注)持続か連続か:連続的とはCAPDのごとくバッチ式に連続して交換することを意味する。持続的とは持続的な流れを意味する。そのため、急性血液浄化では持続の用語を使用する。
 2)持続的腎機能代替療法、continuous renal replacement therapy (CRRT)
 定義)持続的に、腎補助を目的とした血液浄化法を行う。
 3)間歇的血液浄化療法、intermittent blood purification therapy
 定義)持続的でない場合は、すべて間歇的とする。開始時に中断することを設定している場合は間歇的とする。その場合は、必ず、施行方法、時間、施行条件(血液浄化器、血液流量、透析液流量、置換液流量、濾液流量)を記す。
 4)間歇的腎代替療法、intermittent renal replacement therapy (IRRT)
 定義)間歇的に、腎補助を目的とした血液浄化法を行う。
3.持続療法
 1)持続緩徐式血液濾過
 注)これは、現在では保険適用の用語であり、学術用語としては使用を差し控えることが望ましい。英語も適切な用語が認められない。
 2)持続的血液濾過、continuous hemofiltration (CHF)
 定義)持続的に施行する血液濾過療法
 3)持続的血液透析、continuous hemodialysis (CHD)
 定義)持続的に施行する血液透析療法
 4)持続的血液濾過透析、continuous hemodiafiltration (CHDF)
 定義)持続的に施行する血液濾過透析療法
 5)slow continuous ultrafiltration (SCUF)
 定義)持続的に緩徐な除水を行う方式。
 注)英文のslowの定義があいまいであり、また和文は適切な用語が無く、和文表記は省く。
4.送返血ルートによる療法分類
 注)現在では、多くの場合はV-V方式であるため、送返血ルートによる表記の使用を差し控えることが望ましいが、A-V方式を行う場合には必ず送返血ルートの記載が必要であり、この表記方法を使用する。
 1)持続的動静脈血液濾過、continuous arteriovenous hemofiltration (CAVH)
 2)持続的動静脈血液透析、continuous arteriovenous hemodialysis (CAVHD)
 3)持続的動静脈血液濾過透析、continuous arteriovenous hemodiafiltration (CAVHDF)
 4)持続的静静脈血液濾過、continuous venovenous hemofiltration (CVVH)
 5)持続的静静脈血液透析、continuous venovenous hemodialysis (CVVHD)
 6)持続的静静脈血液濾過透析、continuous venovenous hemodiafiltration (CVVHDF)
5.特殊な持続的療法
 注)持続的治療における浄化量を増加させた療法に関する用語は明確ではない。ADQIではcontinuous high volume hemofiltration(CHVHF)とhigh volume hemofiltration(HVHF)が提示されているのみである。本邦においてはCHF、CHD、CHDFは邦語として定着していると考え、たとえば濾過量を増加させたCHFでは「high volume CHF」の表記を邦語表現として採用した。英語表現は「high volume continuous hemofiltration」のごとく省略せずに記す。混乱を避けるため略号の使用はあえて避けた。
 1)high volume CHF、high volume continuous hemofiltration
 定義)通常のCHFより、多い濾液流量を用いるCHFであり、2L/hr以上が妥当と考えられるが、あえて濾液流量には言及しない。
 注)濾過を増加させる場合には「大量、high volume」の用語を用いる(以下同様)。
 2)high flow CHD、high flow continuous hemodialysis
 定義)通常のCHDより、多い透析液流量を用いるCHDであるが、あえて透析液流量には言及しない。
 注)透析液を増加させる場合には「高流量、high flow」の用語を用いる(以下同様)。
 3)high volume CHDF、high volume continuous hemodiafiltration
 定義)通常のCHDFより、多い濾液流量を用いるCHDF。
 4)high flow CHDF、high flow continuous hemodiafiltration
 定義)通常のCHDFより、多い透析液流量を用いるCHDF。
 5)high flow-volume CHDF、high flow-volume continuous hemodiafiltration
 定義)通常のCHDFより、多い濾液流量と透析液流量を用いるCHDF。
 注)flow-volumeという一つの用語とする。
 6)cotinuous high flux dialysis
 注)高透水性の透析器を用い、内部濾過を利用して自動的に血液濾過を行わせる血液濾過透析療法であるが、内部濾過量を測定できない、低血流量では内部濾過は起きないため、使用しないことが望ましい。
6.アフェレシス療法
 1)持続的血漿交換、continuous plasma exchange (CPE)
 定義)持続的に行う血漿交換療法
 2)緩徐血漿交換、slow plasma exchange (SPE)
 定義)通常の血漿交換より血漿交換速度を減少させた血漿交換療法。血漿交換量、治療時間は規定しない。
 3)血液吸着、hemoadsorption (HA)
 定義)直接血液と吸着材を接触させて吸着を行う。濾過膜への吸着は含まない。
 注)直接血液潅流direct hemoperfusion(DHP):血液吸着と同義語である。
7.置換液(補充液)投与経路
 1)前希釈、pre-dilution
 定義)血液浄化器の流入側より置換液(補充液)を投与する。
 2)後希釈、post-dilution
 定義)血液浄化器の流出側より置換液(補充液)を投与する。
 3)前後希釈、pre and post-dilution
 定義)血液浄化器の流入側と流出側より置換液(補充液)を投与する。
8.流量
 注)略号は、正しくは大文字下付であるが表記しにくいため小文字も採用する。
 1)血液流量、blood flow rate (QB、Qb)
 2)透析液流量、dialysate flow rate (QD、Qd)
 3)置換液(補充液)流量、replacement (sub・stitution) flow rate (QS、Qs)
 注)慢性ではQfと表現することが多いが、正確ではなくQsとする。
 4)濾液流量(濾過流量)、filtration flow rate (QF、Qf)
 注)置換液流量と除水量を合計したものである、実際にはultrafiltration rate(UFR、QUF)であるが除水量とまぎらわしいためultrafiltration rateは使用しない。
 5)除水速度(除水量)、body fluid removal rate (QF-QS)
9.材料機器
 1)透析液、dialysate
 2)置換液(補充液)、replacement (substitution) fluid
 定義)血液濾過の際に用いる置換液(補充液)
 3)透析濾過液、diafiltrate
 定義)HDFの際の濾過液と透析液が混在した排液
 4)血液透析器(ダイアライザ)、(hemo) dialyzer
 注)血液透析器(ダイアライザ)として認可されたものを血液浄化器として用いる場合には、必ず血液透析器(ダイアライザ)と表記する。さらに表記に膜腫、面積は必須(あるいは商品名と製造メーカを記す)。
 5)血液濾過器、hemofilter
 注)持続緩徐式血液濾過器または血液濾過器として認可されたものを血液浄化器として用いる場合には、血液濾過器(hemofilter)と表記する。さらに表記に膜腫、面積は必須(あるいは商品名と製造メーカを記す)。
 6)持続緩徐式血液濾過器
 注)適切な英語表現が無い。保険用語であり、学術用語としては使用は差し控える。
 7)血液回路、blood circuit
 8)血液ポンプ、blood pump
 9)置換液(補充液)ポンプ、replacement (substitution) fluid pump
 10)透析液ポンプ、dialysate pump
 11)濾液ポンプ、filtrate pump
 12)血液浄化装置、blood purification system
 定義)血液ポンプ、置換液(補充液)ポンプ、透析液ポンプ、濾液ポンプおよび監視装置よりなるシステム、透析液供給装置は含まれていない、主に急性血液浄化に用いられる。

おわりに

「急性血液浄化法に関する名称・用語」試案を提示した。今後、会員各位のご意見を賜り、更なる論議を尽くし、「急性血液浄化法名称・用語集」として刊行したい。なお、本試案に関しては、小委員会が責任を負うものである。

特定非営利活動法人 日本急性血液浄化学会