医療安全・倫理

日本急性血液浄化学会の研究倫理の指針

学術活動に向けた研究倫理の考え方

特定非営利活動法人日本急性血液浄化学会の学術集会及び学会誌において発表・報告する医学系研究は,患者及び研究対象者の尊厳と人権を守り,「ヘルシンキ宣言」1),「個人情報保護法」2),「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」3),「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」3),「遺伝子治療等臨床研究に関する指針」3),「再生医療等の安全性の確保等に関する法律(再生医療等安全性確保法)」4),「臨床研究法」5)及び関連するその他の法令,政令,省令,指針,通知等を遵守して行う必要があります.また動物実験等の人を対象としない研究については,ライフサイエンスにおける生命倫理6)あるいは安全7)に関連する法令・政令・省令・指針及び通知等を遵守して行われなければなりません.
令和4年度改正個人情報保護法の開始により,学術研究分野及び医療分野においては,原則として「現行の個人情報保護法が定める民間事業者に対する規律」に一本化されています.この改正により学術研究機関にも,①安全管理措置(改正後の個情法第23条)や②本人からの開示等請求への対応(同第33条等)等に関する義務についての規律が課されます.
そのうえで,学術研究目的で個人情報を取り扱う場合には,①利用目的による制限(改正後の個情法第18条),②要配慮個人情報の取得制限(同第20条第2項),③個人データの第三者提供の制限(第27条)等,研究データの利用や流通を直接制約し得る義務については,個人の権利利益を不当に侵害するおそれがある場合を除き,例外規定を置いています.
学術研究機関等においては、学術研究目的で行う個人情報の取扱いについて,この法律の規定を遵守するとともに,その適正を確保するために必要な措置を自ら講じる必要があります.その主な点は次の通りです.

・学術研究機関等が学術研究目的で個人情報を取り扱う場合には,当該個人情報の取扱いについて,この法律を遵守するとともに,学術研究機関等について法律の特例が設けられているものも含め,安全管理措置,苦情処理等,個人情報等の適正な取扱いを確保するために必要な措置を自ら講じ,かつ,当該措置の内容を公表するよう努めなければなりません.
・この点,個人情報の利用、取得及び提供に係る規律のうち,個人情報の目的外利用(法第18条),要配慮個人情報の取得(法第20条第2項)及び第三者提供の制限(法第27条)に関しては,学術研究機関等が学術研究の用に供する場合,学術研究機関等が学術研究の結果の発表又は教授の用に供する場合,及び非学術研究機関等が学術研究機関等と共同して学術研究の用に供する場合について,本人又は第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがない場合に限って,事前の本人同意を要しない等の特例が設けられています.
・一方で,個人情報の利用,取得及び提供に係る規律であっても,利用目的の特定(法第17条),不適正な利用の禁止(法第19条),適正な取得(法第20条第1項),利用目的の通知(法第21条)及びデータ内容の正確性の確保(法第22条)については,他の個人情報取扱事業者と同様の規律が学術研究機関等にも適用されることとなります.
・また,個人データの安全管理措置に係る規律(法第23条から第26条まで),保有個人データの開示,訂正等及び利用停止等の請求に係る規律(法第33条から第40条まで),仮名加工情報取扱事業者等の義務(法第4章第3節),匿名加工情報取扱事業者等の義務(法第4章第4節)及び民間団体による個人情報の保護の推進に係る規定(法第4章第5節)についても,他の個人情報取扱事業者と同様の規律が学術研究機関等にも適用されることになります.

以下に記述する本指針は,これらの宣言や法令・指針等に基づいて作成されたもので,それに則り幅広い研究活動を行うために規範となるものです.本指針は,必ずしも網羅的ではなく,研究内容によっては別途考慮すべき要素があり得ることに留意し,個々の研究内容に応じた適切な対応を行って頂く必要があります.
本指針では,今後の日本急性血液浄化学会の学術研究活動に寄与すると考えられる応募演題や投稿論文を倫理的な手続きのフローチャートによる5分類(A, B, C, D1, D2)の略図で特化しました(5分類は日本急性血液浄化学会への演題応募・論文投稿に関する倫理手続きの指針を参照).「倫理審査やインフォームド・コンセントが原則不要な研究」を,本指針ではカテゴリーAに分類していますが,複数のカテゴリーに属する研究を含む場合には,該当するそれぞれのカテゴリーが求める手続きを全てクリアする必要があります.
なお,学術集会での発表に症例の提示が含まれる場合には,使用する画像,動画などの診療情報の個人情報保護に十分留意する必要があります.具体的には日本急性血液浄化学会への演題応募・論文投稿に関する倫理手続きの指針「Ⅵ.症例報告について」の項目の記載に準じた対応が必要です.また,発表に際しては著作権法に留意し,図や動画の引用についての許諾承認手続きを経ている必要があります.

特定非営利活動法人 日本急性血液浄化学会